PM9:33




「ーー花火打ち上げ5分前になります。」



館内放送が流れた。

上から聞こえたそれにつられたように、上を向く美丘。美丘の瞳は儚げに揺れている。


俺はキュッと、胸が苦しくなった。



「…美丘。」


口に出すと、その声は震えていて。
だらしないくらいにかっこ悪い声のオマケに、手までもがブルブル震えている。



美丘、みおか、みおか。
その名前の音は、どこまでも甘ったるい。



「お前本当に幸せなの?」



約束の時間は守らない。
平気で美丘を泣かせる。


美丘はいつだって、アイツに振り回されている。



それで本当にお前は、幸せなの?




「えー?なんで〜?」



美丘は吹き出したように笑いながら、顔をクシャクシャにしていた。



ーー美丘は弱音さえ、俺に吐いてくれないんだ。