PM9:33




「……。」

「……。」



なんとなく、お互い無言になってしまった。


美丘は沈黙を気にする様子はなく、ただ時計を繰り返し見て、辺りをキョロキョロしていて。

多分、アイツがいない限り、美丘にとって俺との沈黙とか大した問題じゃないんだと思う。


美丘にとって俺は、所詮その程度の人間だった。



「……。」



浴衣可愛いよ、とか。
蝶々のスリーピン似合ってるね、だとか。



俺だって美丘に言いたいことは、いっぱいある。



俺だったら、アイツと違って美丘を不安にさせないし、遅刻もしないし、そんな悲しい顔をさせないのに。


美丘が欲しいのは俺ではなくアイツの「可愛いね。」の一言であり、美丘が待っているのは俺じゃなくてアイツで。



ーー浴衣を着て一緒に花火をみると永遠に結ばれるんだって。


恥ずかしいから浴衣を着ないと言った美丘に、浴衣を着させたのはアイツの存在だった。