「……。」
「……。」
なんとなく、お互い無言になってしまった。
美丘は沈黙を気にする様子はなく、ただ時計を繰り返し見て、辺りをキョロキョロしていて。
多分、アイツがいない限り、美丘にとって俺との沈黙とか大した問題じゃないんだと思う。
美丘にとって俺は、所詮その程度の人間だった。
「……。」
浴衣可愛いよ、とか。
蝶々のスリーピン似合ってるね、だとか。
俺だって美丘に言いたいことは、いっぱいある。
俺だったら、アイツと違って美丘を不安にさせないし、遅刻もしないし、そんな悲しい顔をさせないのに。
美丘が欲しいのは俺ではなくアイツの「可愛いね。」の一言であり、美丘が待っているのは俺じゃなくてアイツで。
ーー浴衣を着て一緒に花火をみると永遠に結ばれるんだって。
恥ずかしいから浴衣を着ないと言った美丘に、浴衣を着させたのはアイツの存在だった。

