「よくなかった? 俺とのキス」
くいって持ち上げられた顎。
二楷堂が近づいてくるのが、視界の端で見えたけど……動けない。
突き放そうと思うのに、身体が言う事をきかない。
それどころか、昨日のキスをうっかり思い出したせいで、また、求めようとしてる。
身体が、二楷堂のキスを求めてる。
制御できない。
昨日と一緒だ。
まるで、血を思い出した途端欲しくなる吸血衝動と一緒――。
「悪くは、なかったけど……」
息が上がる。
吸血衝動が自分の中で湧き上がるのを感じて、二楷堂の胸を押した。
「亜姫?」
「離れて……っ」
「どうかした?」
「いいから……! お願いだから、離れてっ!
このままじゃ……二楷堂を、キズつけちゃうから……っ」



