美音に、会長は今年70歳を迎えて協会内では生誕祭があるなんて聞いたけれど、人の悪そうな顔はそのままだ。
多少シワが増えたけれど、意地の悪そうな顔つきは昔の恨みをひとつ残らず思い出させる。

会長を前にした美音が隣で深々と頭を下げたけれど、私はそうしなかった。
睨むように見ていると、会長がふっと笑う。

「美音、頭をあげろ。
誰を連れてきたのかと思えば……久しぶりですね、亜姫お嬢様」

わざとらしい敬語も、お嬢様なんていう呼び名も全部が嫌味にしか聞こえなかったし、会長もそのつもりだ。

顔をしかめた私を、楽しそうに含み笑いを浮かべて見ていた。

「血に狂い死ぬことしかできなかった愚かな女の娘がどんな風に育ったかと思えば……お綺麗になられたものだ」
「母の事を侮辱するのはやめてください」

強い口調でそう言うと、隣の美音が心配そうな瞳を向けた。
会長にたてつくなって事なんだろうけど、最初からただ美音の報告を隣で大人しく聞いていようだなんてそんなつもりはなかった。

言いつけられるままそれを素直に聞きいれるつもりなんて毛頭ない。