「でも、美音の事もあるから。
ずっと一緒になんていたら美音が二楷堂に何するか分からないし……」
「だとしても関係ないよ。さっきの男を見れば分かるだろ。
俺と普通のヴァンパイアとの力の差が」
「だけど、協会に知られたりしたらマズイんでしょ? だから……」
「それは今言ったばかりだろ。
それよりも亜姫が大事だって」
「それは……そうだけど……」

大人しくなった私に、二楷堂はしばらくしてからはーっと深いため息をついてそのままベッドに仰向けになる。
どうしたのかと思って見ていると、二楷堂は天井を見つめたまま口を開く。

「あの男に襲われそうになった亜姫を見た瞬間、怒りで狂うかと思った」

それから、私に視線を移してツラそうに瞳を細めて微笑んだ。

「あんな風に怒りに囚われて威圧したのは初めてだ」

ごめんと謝ると、二楷堂が手を伸ばして座ったままの私の手を握る。