「沢井さん、休憩入って」 「はい」 朝早くからどっと押し寄せた外来患者をさばきにさばいて、交替時間で医事室に下がろうとしたときだった。 前方から歩いてきた白衣の男性がすれ違いざま手紙を渡してきた。 それは外科医の―― 「杉本先生」 振り返って呼びかけると、彼は背を向けたままスチャっと右手をかざし、そのまま病棟に向かっていった。 渡された手紙には、時代錯誤なハートマークのシールが貼られていて、その表面にはご丁寧に『ラブレター』と書かれている。 思わずため息がこぼれた。