ふいに青年から名前を尋ねられ、カローナは、思わずピクリと反応してしまう。

そんな彼女にお構い無しで黒髪の青年は、ニコリと微笑むと。

「私はレイン。カローナ姫、今夜はお会いできて光栄です」

恭しくお辞儀をしながら、自己紹介をする。

レイン…。やっぱり聞いたことのない名前ね。

「レイン様、はじめまして。私はサーフィア国第一王女のカローナと申します」

そんなことを考えつつ、カローナは青年に向かってお辞儀を返した。


その時。


「…ねぇ、カローナ姫は、この結婚どう思ってる?」


「…え?」


レインは、徐ろにそんな問いかけをしてきた。


唐突な質問にカローナが目を丸くさせていると、レインはニヤリと不敵な笑みをこぼす。

そして。


「…自分の父親とそう変わらない年齢の男と結婚ってさ、どんな気分なのかなって?」

続けざまにそんな失礼な質問を重ねてきた。


…なにコイツ…すっごく失礼なんですけど!?


とりあえず知り合ってまだ数十分の相手に聞く質問でないし、この場に集まっている貴族たちなら暗黙の了解でわかっているはずだ。


「そんなの良い気分じゃないことだけは確かなんじゃないですか?」


嫌味ったらしくカローナがそう言い放っても、レインはあまり気にしていないのか余裕そうに見つめるだけ。