「慧と…めぐちゃん」

「なにデート中?」

「当たり前だろ」

「ふーん。…んじゃ行くわ」

「……」

「芽魅、ちゃんと掴まれよ」

「…慧ってめぐん家知ってんの?」

「あぁー、知らねぇな」

「んじゃ俺が連れてくよ」

「はぁ?明里送れよ」

「…明里、お前慧でもいいだろ?」

「えっ…、波留送ってくれないの?」

「…いや、めぐん家知ってんの俺しかいねぇじゃん」



……ダメだ。

それは、ダメ。

明里さんよりあたしを選ぶような事はダメだよ。

例え先輩があたしを“後輩”としか思ってなくても。




「大丈夫です、先輩」

「芽魅酔いさめた?」

「まだ頭痛いけどだいぶ…」

「冷てぇ風だもんな」

「…慧、帰ろ」

「めぐ?俺が送るって」

「先輩は明里さん送んなきゃダメじゃないですか」

「明里は慧が…」

「あたしは波留がいい!!」

「あ、明里?」

「…ほら、先輩。明里さんは先輩がいいって」

「…めぐ、でも」

「彼氏なんだから彼女をちゃんと送るのは当たり前だろ」

「慧」




…そうだよ、先輩。

でも先輩があたしを選んでくれた事嬉しかったよ。

心が少し、温かくなった。



「慧ー、パフェ食べたい」

「俺のあげたじゃん」

「…じゃあー、クレープ」

「食い過ぎ。芽魅は酒飲んだり食べたりしすぎ。少しは出会いを求めろ」

「…いらなーい。だって慧が居るから近寄ってこないもん」



先輩たちの横を通って帰る。

…先輩、もう少し。

あと少しでちゃんと、

“先輩”に戻せる。