「慧が大事な人なんだ?」
「へっ…?」
「そうなんだろ?」
…まただ。
醜い、嫉妬。
「波留、なに言ってんだよ?俺にはもう妻もいるし子供いるからな」
「だから?いつまでもイチャイチャしやがって」
「あ?なにが言いてぇんだよ」
「お前らで浮気してんじ…」
――パンッ…
乾いた音が部屋中に響く。
俺の言葉を遮る、音。
「…ってぇ…」
「めぐちゃん!?」
「…芽魅…」
目に涙を浮かべながらキッと俺を睨み付けるめぐ。
…殴ったのは、めぐ。
「謝って!!」
「…あ?」
「慧に謝って!!沙梨に謝って!!」
「……」
わかってる。
謝んなきゃいけねぇのは。
めぐにだって謝んなきゃなんねぇ…。
なのに……くそッ。
「…めっちゃん、落ち着こ?」
「謝ってよ、波留!!」
「…うっせんだよ」
違う、違う…!
こんな事言いてぇんじゃねぇのに…。
「…よ…」
「は…?」
「なんで…っわかんないの!!波留…以外に…いるはず…ないじゃない…!」
「…めぐ…」
「なんで…!わかんないの…っ…!」
あぁ…。
俺はこんなに愛されてる。
…ごめん、めぐ。
ごめん…
「ごめん」
「…別に俺はいいよ」
「あたしも♪高校の時からだよ?なれた、なれた」
「へぇー?妬かないの、お前」
「や、妬かないわよ!」
「…ふーん。」
「…めぐ…」
「も…いいもん!!」
「芽魅…おいで」
「…いか、ない…!」
…だよな。
俺がひどいことしたんだし…。
「め…」
「ギュって…してよ…波留…?」
「…めぐ…」
波留の胸に飛び込む芽魅。
芽魅…。
可愛くて可愛くて…仕方ない。
なぁ…なんでんな可愛いんだよ?
…大変なんだよ、俺。

