「くそっ…なんで早く行かねぇ!!」



車が進まない事にも腹がたつ。

速く行きたいのに…、

めぐの側に行きたいのに、

めぐの顔を見たいのに、

全てが俺の邪魔をする。




「おせぇんだよ!!」



――波留こら!スピード違反!



そういやめぐに怒られたっけ?

スピード違反だ、とか。

シートベルト閉めて、とか。




「やべぇ、時間ねぇのに!!」

「ふふっ…波留急がないで」

「はぁ!?」




時間が無くて焦っていた時だって。




「急いで事故に遭ったらどうするの?」

「ならないよ」

「そんなのわからないじゃない。もっとも、事故に遭ったらもともこもない」

「…わかった、ゆっくり行く」




焦っていた俺を宥めた、めぐ。

あのままもし焦って乱暴に運転していたら、今の俺はいないかもしれない。

運命は変わっていたかもしれない。




「ゆっくり、焦らず…だよな、めぐ。」



本当はもっと速く行きたい。

だけどこのまま事故に遭ったらもともこもないだろ?…それこそ。

だったらめぐの言った通りで行く。

でも…少しの違反は見逃してくれ。