『波留ぅー!早くしろ、講義始まるよ!』
…女の人の、声。
先輩ってやっぱりモテちゃうんだ。
電話してたらいつも同じ人に阻まれる。
慣れた?って聞かれても、あたしは“全然”って感じ。
慣れるわけないもん…。
『あー、わかったから!んじゃまたな!』
「…波留っ」
『ん?…ちょっと波留!』
思わず引き留めてしまった。
どうして波留って呼ぶの?
なんで一緒にいるの?
そんなに仲良しなの?
男の子とは行かないの?
どうしていつも…その子なの?
あたしの醜い嫉妬たち。
「講義…頑張って…!」
『お…』
――ブチッ…
あたしは先輩の返事も聞かないで電話を切った。
もうあの子の声を聞きたくないから。
…声を聞いてしまったら、なにもかも崩れそうで。

