「「ごちそうさま………」」

私は、ため息吐いてから、部屋に行き、通帳を机の中から取る。

9万5000円……。バイトを始めてから、ずっと貯めてきたお金。

「このお金は、お兄ちゃんの為に使うんだ…」

私は、通帳を片手にリビングに戻る。お兄ちゃんは、ビールを呑みながらソファに座りテレビを見ていた。

「あー、ゅーう!ぉゎらぃ、おもしろぃぞー」

顔を真っ赤にして、楽しそうにお兄ちゃんが笑った。

え?まさかの、もう酔っているんですか……?リビングから離れたの5分も経ってないよ……?

「お兄ちゃん、ちょっと話あるんだけど……」

「んー?もう、初体験貰っていいってか?」

「大丈夫。そう言うのは、一生ないから」

「んー、じゃぁ、なんだー?結婚してくれんのかー?」

ニコニコと、お兄ちゃんが笑う。私も、つられて少し笑った。

「違うよ…。…………これ」

私は、通帳をお兄ちゃんに手渡す。お兄ちゃんは、首を傾げて中身を見た。

「9万5000円……?優が、貯めたのかー?凄いなー……」

「それ、私が引っ越そうと思って貯めたお金」

「………………え?」

私が、お兄ちゃんに告げると、お兄ちゃんの顔から笑顔が消える。

「大丈夫。もう、引っ越そうと思ってないから。……ただ、勝手にそう考えていたことを謝ろうと思って……」

「…………………」

「ごめんなさい。お兄ちゃん」

「…………………」

「黙っててごめんなさい。もう、絶対にしないから」

「………………っ」

お兄ちゃんは、ビールの缶を落として泣き始める。缶ビールは、コロコロ転がっていって、中身が全て零れ出す。

「………ごめんなさい」

「っ……ぁ……ぅ………」

お兄ちゃんは、声を抑えようとしてるけど。嗚咽が漏れていた。

「私、もう絶対にしない。お兄ちゃんから、離れないから。…だから…勝手だけど…。……もう……、泣かないで……」

「ぃゃだ……。……俺……優から離れたくない……。…ずっ、と…ずっと…、優のお兄ちゃんで…良いから…。……優と…一緒に、……いたいんだ…」

「………………」

私は、本当にバカだ。これだけお兄ちゃんを傷つけて、追いつめて……。

「ずっと……優と…、いたい………」

「ぅん。……私もだよ。……私も、お兄ちゃんとずっとにいたいよ………」

お兄ちゃんは、涙を腕で拭う。

「………離れないで……。俺には、優しかいない……、いらない………」

「……ぅん。……分かってる。ごめんね……」

「……ねむぃ…………」

お兄ちゃんは、涙が止まっていない目をこすって、私の腕を引っ張った。

「…はぁ……。………お兄ちゃん……」

……あのね、…仕事で疲れてるのは、分かるけどね……。いゃ、もっと疲れさせたの私か……。

「ねむぃ…、どうしよう………ずっ……」

「はい、ティッシュ……」

私は、お兄ちゃんの鼻にティッシュを当てる。お兄ちゃんは、チーンと鼻をかんだ。

「……ありがとう………」

「ほら、次、ベットに行くよ」

「ぅん……」

お兄ちゃんは、目をパチパチさせて、無理矢理目を開ける。