「まぁ、そんな事はどうでも良い!さぁ、優!帰るぞ!」

「えぇえ……。……はーい。リイさん、また今度です……」

「うん…、また明日…ね?」

「明日…?」

まっ、まさか……。……あの人達が……。

「明日は、リン達皆来れる日何だ…よ?」

そのまさかだった……。明日は、大変そうだ……。いや、明日も、大変だ……。

「そう…ですか…」

でも、まぁ。……ちょっと楽しみかも……。

「うん…、じゃあ、優ちゃん…、また明日…ね?先輩も、また明日…です?」

「あぁ、また明日な」

リイさんは、私に優しく手を振って。信号まで、走って帰って行った。

「スーツが、しわくちゃに、なりそう……」

私は、走って行ったリイさんのスーツを心配する。

「バカだな!水村は!」

お兄ちゃんが、アハハと笑って私の手を握った。私は、ビックリして振り払ってしまった。

「ちょっ…!!!」

お兄ちゃんは、私に手を振り払われたのが。相当ショックだったのか……。

「俺、ちょっと。歩道橋から、飛び降りてくるわ……」

「いゃ。ちょっと、待ってよ!ごめんって!急に過ぎて、ビックリしただけだから!決して、お兄ちゃんが嫌いだったとか、じゃないから!」

「ほっ…本当か…?嘘じゃないか…?」

「本当に、本当だから!だから、飛び降りてくるとか、言わないでよ!」

「………優?何で、泣いてるんだ?」

お兄ちゃんが、私の頭を優しく撫でた。

「えっ……?泣いてる……?」

私は、自分の目下を触る。手が濡れていて……。自分も、ビックリする。

あれ?何でだろう……?何で、泣いてるんだろう……?

「……ごめんな?大丈夫か?」

………あぁ。そうだ。……昔の事を、頭が勝手に思い出してしまったのか……。

「……うん。大丈夫……」

「ほら、ハンカチ……。ちょっと、待ってろよ?……今、探しっ…。あった、ほら。泣くな……」

お兄ちゃんが、スーツのポケットからハンカチを取り出した。…お兄ちゃんが私の涙を拭いたハンカチは。…昔、私が初めて、お兄ちゃんに買ってあげたハンカチだった。

「これ、私が、買ってあげたハンカチ……」

「あぁ。そうだよ」

「何で、こんなに綺麗なの?」

「あまり、使ってないんだよ。汚したくないからな。…でも、毎日持ってる。優だと思ってな。勇気が出るんだよ…。仕事で、失敗しても…。優が、応援してくれている…ようで…」

ハハッと、笑ったお兄ちゃんの顔は。凄い、優しくて。少し、切なかった。

「また違うハンカチ買ってあげるよ。…給料、沢山貯まったから…」

「俺は、優の初体験が欲しいな」

「ダメ」

「冗談でも、良いよって言えよ!」

「冗談で、言ったら本当に奪うじゃん!」

「当たり前だろ!俺に、冗談は通じない!」

「堂々と、胸張らなくて良いから!」

私は、お兄ちゃんを軽く叩く。お兄ちゃんは、昔から変わってない笑顔で。私に笑いかけた。

その後、お兄ちゃんの車に乗ろうとしたら。レンに会った。少しだけ話してから、家に帰った。

そして、死ぬ気で入ったお風呂からあがって。ぺちゃくちゃとうるさいお兄ちゃんを無視しながらご飯を食べて。

鍵をちゃんとかけてから寝た。