静かだった廊下が、段々と騒がしくなってきた頃……。

「本当に、最低な奴らね…。君、立てる?」

ほらっと、僕に手を差し伸べた。僕は、その手を掴んで立ち上がる。

「ありが…とう…」

「いーえ」

「アナタ、名前!名前教えて!友達になろうよ!私、希梱カナ!よろしく!」

「私、心羅チカ。よろしくね」

「私は、原野優。よろしく。…君は?名前」

「えっ?僕……?」

転校生の女の子は、僕を軽く指差す。急に言われて、ビックリする。

「うん。君の名前」

「えっと、凛土レン……」

「そっか。…よろしく。レン」

ニコッと笑う彼女の笑顔に、僕の心は変な動きをする。
……何だろ?コレ……。

「そうだ。レン、保健室行こ?顔の怪我酷いから」

原野優さんは、僕の手を引っ張る。

「あっ、分かりました…」

「私も、ついてく!優様に!」

「様っ?!…何で様なの?普通で良いよ」

「優様は、神様だから!ね?チカ!」

「…………?宇宙の?」

「うっ、宇宙……?」

転校生の女の子……。原野優さんは、何を言ってるか分からないと、いう顔をしてた。

「うん!宇宙は、凄い綺麗なんだ!私の将来の夢は、宇宙人に逢って、結婚するんだ!」

「宇宙人と結婚?!何で?!」

「宇宙人は、格好いいから!優みたいに!」

「褒められてるのか、貶されてるのか分からない微妙な狭間ね……」

「そう?私は、褒めてるつもり!さっきの優は、宇宙人みたいに格好良かった!もう、宇宙人じゃないかって位!」

「チカ、絶対に私の事バカにしてるわよね?絶対にそうよね?!」

「原野優さん。…チカは、こういう人だから、あまり気にしなくて良い…」

「フルネームって…。優で、良いよ。友達でしょ?」

「友、達……」

僕には、カナとチカ以外友達はいなかった。だから、友達って言われて嬉しかったんだ……。

「うん」

あっ、あれ?何か、ゆっ、優が保健室とは真逆の方向に……?

「ちょっ、保健室あっち…」

僕は、思わず優の制服を引っ張った。

「えっ?そうなの?…ごめん。私、昨日来たばかりだったから。まだ覚えてないんだ…。あっ!レン、今度私に学校案内して?レンなら、大丈夫そうな気がするから」

「……わっ、分かった……。じゃあ、…あっ、明日で……」

「ありがとう。レン」

「………うん」

「レンー?顔赤いよ?暑いの?まだ、5月入ったばかりだよ?」

カナが、僕の顔をマジマジと見てくる。僕は、見られたくなくてカナと反対側を見る。

「別に暑くない。後、顔も赤くない。赤い訳ない……」

もし、赤いなら思い当たる節は一つだけ。

「あれ?保健室って、あれで良いの?」

優が、保健室を指差した。

「うん。あれで良い」

「じゃあ、保健室にレッツゴー!」

優が、僕の手を引っ張りながら走り出す。風が僕の髪の毛を透き通る。
手から、首へ。首から、顔へ。と、火照るのが分かる。熱い…。体が手が……心が。

「優、レン!待ってー!」

「速いよー!」

「早くー!」

僕と優は、先に保健室に着いた。コンコンっと、優がドアをノックする。

「失礼しまーす……」

「先生、いないね……」

……どうしよ……。これじゃあ、怪我の手当て出来ない……。

「しょうがない。私が、怪我の手当てするよ…。レン、そこに座ってて」

「ん、分かっ………」

優は、ベットを指差してた。僕の思考は、完全に止まる。…………?!なっ、何をかっ、考えて………!?

「ちょっと痛いから、心の準備しておいてね…」

「えっ………?!」

僕が、痛い方をするの?!……そっ、それは嫌だな……。