「立てる? 少し歩こう」 なぜか彼が急にそう言い出すものだから、言われるがまま手を引かれて立ち上がる。 じゃりじゃりという砂浜を越えて、私たち2人は長い防波堤の先へと歩き出す。 「……澪」 「……うん?」 今日1日、どことなく不思議な彼の雰囲気に惑わされて。 私はそれを無かったことにしようとしていた。 だって、恐いから。 ……きっと、それは私が知ってはいけないことだと思ったから。 だけど……このまま曖昧にして。 私はそれでいいのだろうか。 聞くなら、今だと思った。