ノスタルジア






ガチャン と玄関の外側からかけられたロック。




茶色い革の鞄を肩から下げた彼が、私の方を振り返る。






「行こっか」





なんて、自然に私の左手を握って外へと歩き出す。




白い服がよく似合う赤毛の彼が着ているのは、滅多に着ない黒のブルゾンで。




家の中で見ていた彼とは、少し違う雰囲気に見えた。






「何、ジロジロ見て」



「澪は悔しいけど格好いい……」



「そりゃどーも」






そんな彼と肩を並べて、私は初めてコンクリートの上に足を踏み出す。