私だって悩んだことあったよ。だからきっと、文章を書くことが好きになったんだよ。
だって、小1のとき、読書感想文を書いて、友達が書いた「かぐや姫」の感想文があまりにも上手で、自分の書いたものはなんて下手なんだと思ったら、作文そのものが嫌いになったしね。原稿用紙のマス目が嫌だった。書かなきゃ、これをうめなきゃ、って思わされるような気がして。それがいつ変わったかなんて、おぼえてない。

 自分でもわかっているけど。

「下手だよね。今日、つくづくそう思った。文章力足りてない」

 ストーリーは、まだ途中のような、これから続きがないとおかしいところで終わっている。にもかかわらず、書く時間がなかなかとれないのを理由に、これ以上書く気がない。

 いっそ、誰かにこの続きを書いてほしいぐらいだ。

 グラスの水を飲んだ。のどが一気に冷たくなる。

 ありもしない客観性で自分の文章を判断するより、こうして人に読まれて、感想をもらうほうがいい。

 人に読んでもらうのって、なに言われるのかわからなくて怖いけど、読まれないと始まらない。

「なんで坂井さんの書いたものって、暗くて重いの?」

「うるさいよ」

 的確なやつめ。

 でも私は笑っている。

 この人なら読んでもらってもいい、と思える人がいるのは、幸せなことだ。信頼している人がいるってことだもの。

 また水を飲んだ。今日は家に帰ったら、のどがカラカラになっていそうだ。

 そういえば、会って話すの、久しぶりだったな。

「授業より放課後にあったことのほうが、卒業したあと思いだせるよね」


 私は、これからどんな空想を考えるんだろう。