「どうだろう。たださ、最後に僕はたぶん、きついことを言うよ」

 先に言っておくのは、怖いからだ。防衛したいからだ。それに、そんな性格だから。

「死にたくなった。でもいつかはどんな人間だって死ぬんだよ。それを自分でどうするか、どうもしないかの違いじゃないの? それがどうした。だからどうした。そんなに死にたいんだったら死ねばいいんじゃない、って言うよ。ただし、僕の知らないときにしてくれよ」

 心配だよ。でも迷惑だ。

 星野は黙っている。

 ひっでえ、と内心、つぶやいた。なんでこんな、やさしさのかけらもない言い方しかできないのか。

「あ、そうそう。どうして生きなくちゃならないんだって考え続けた人が自殺したんだよな。誰だったかな?」

 昔の作家だっけ。名前なんて知らない。そういう人がいたってことしかおぼえていない。文豪って言われてるのに、満たされない人生だったのかね。

「死んだら全部終わりだよ。最近さー、まだこれからってやつが死ぬんだよな。ポイントゼロ」

 ポイントカードだ。

「ポイント?」

「そう。あれって一年に一回更新しないと、ポイントなくなるんだよ。そのポイントがどこに行くかっていうと、そのカードつくった会社なんだよ。それに、おまえが嫌いな奴はおまえが死んでも生きていくんだよ? 嫌じゃない? 自分がいないのに、そいつは幸せそうに生き続けるのって。死んで恨んだって、化けて出たって、どうせそんなやつ気づかねえよ。鈍感だから」

 思いつくままに話していた。

 僕は星野さんに死んでほしくない。