「お前達のせいで、ぼく達はいい迷惑だ。柳。宮本」


ぼくはコンビ名を付けた柳と宮本に抗議をした。

この二人は、いつもぼくとつるんでいる仲の良いクラスメイトだ。


悪ノリが大好きで、今回みたいなことをしでかしてくれる。

変なあだ名を付けた二人はぼくの睨みも抗議も足蹴にして、こう反論した。


「可愛がっているだけだって。それに中井も悪いんだぜ? おれ達に黙って彼女を作るなんて。こういう場合は、彼女を作る前に恋の相談してくれるもんじゃねーの?」


柳がさも正論だと言わんばかりに鼻を鳴らし、「そうそう」と、宮本が便乗する。


「中井が仲井さんを意識しているなんて、これっぽっちも知らなかった。ほら、噂をすればお前の彼女がそこにいるぞ」


あごでしゃくる先には確かに仲井さんがいた。

丁度、友達と教室に入って来るところからして、図書室にでもいたんだと思う。

彼女は絵を描く他にも本を読むことが好きだから、何か借りに行っていたんだろう。


これでも彼氏として一週間、仲井さんのことは観察しているんだぜ? ちょっとしたきっかけでも元に戻る糸口になれば、と思ってさ。


と、見計らったように柳が大きな声でぼくに話し掛けてきた。


「中井は彼女のどこが好きになったんだ? 教えてくれよ」

「はっ、ちょ、柳お前!」


ニタニタと笑いながら首に腕を絡めてくる柳は、「いいじゃん」と、ぼくを肘で小突く。

「おれも知りたい知りたい。教えてくれよ。中井、どこに惚れたんだ? お前から告白したんだろう?」

「宮本。お前まで……」


二人を交互に睨むと、両サイドから彼女が見ていると冷やかしてきた。

恐る恐る仲井さんがいるであろう、教室の出入り口を一瞥すれば、確かに彼女がこっちを見ている。

変なことを言わないで、と細くなる目が訴えていた。


分かっているって。

カレカノとして、ちゃんと上手くやるから。


ぼくはあごに指を絡め、必死に惚れた理由を考える。