そうはさせない。
 
 だって、どっかのせっかちさんのおかげで間違えられた私は本来ならばまだここに来てはいけないことになっているんだから、そう、規約で言うところのそれこそ規約違反だよ。本当だったらもう体に意識が戻っていてもいいころだと思う。

 そんなことを言ってても埒が明かないので、ここはぐいっとこらえて進展してくれるように祈るばかり。

 生前悪い行いをしたら死んでからここに来るのかと思うと身震いがする。
 ちゃうんとまっとうに生きよう。お天道様に顔を向けて生きられるようにちゃんとしようと心に思う。


「ですから、人を殺したり騙したり盗んだり、悪いことさえしなければ、それから自殺なんかしなければ私のところには来ませんから」

「もしかして私また言ってたの?」

「たぶん」

「たぶんてなに?」

「言ってました」


 いいや、言ってないな。

 完全に読んでるなこいつ。

 楽しんでる! 完全に楽しんでるとしか思えない。って、これも読まれてたりしたら……


 口角を左右に大きく引き延ばして笑った死神の顔、なんかの妖怪に見える。口裂け男だ。それが答えだ。なんでも私の思うことなんてお見通しってことか。


 くっそー。

 何もできない自分に腹がたつ。でも矛盾してるけど、なんかおかしくなってしまう私もいて、正直複雑。