「ま、見つかるまではここにいることだな」

 そういうとルーインはアンジュラの肩を叩き、がんばれよという雰囲気を醸し出した。

 
 ちょっと待って。こんな暗くて陰気くさいとこじゃなくて、どっちかって言ったらルーインのところの方がいいような気がするんですけど。てかやっぱそっちの方がいい。何回も言うけどそっちの方がいい。

 だって、仮にも天使でしょ?

 さっきの場所は白くてふわふわしてて綺麗で居心地良さそうだったし。



 ここは……なんか悪夢みそう。


 至極の言い分を言ってみる。


「それは無理」
 

 間髪なしの即答。


 私がこっちにいるのは、選別する係(誰だか知らないけど)がここへ送ってきたわけだから、ここから移動できないことになっている。


 なんとも悲しくなる言い分。


 横目にちらりとアンジュラを覗う。

 目が合うと、ひとまずその薄気味悪い白い顔ににこりと綺麗な笑顔を乗せた。

 かっこいいと思うのと薄気味悪いのが合わさると、何とも言えない気持ちになる。

 
 そして……その笑顔の裏に垣間見える本当の姿が逆に怖い。


 爽やかなかっこよさじゃなくて、何か恐怖を纏った笑みにしか見えない。
 
 まぁ、これと一緒にいても何が起こるわけでもないし、少しの間、我慢するしかないか。


「悪夢は見ませんよ。ここが既に悪夢でしょうから」

「……ああ、そう。また声に出してたんだ私。ありがとう悪夢の中に連れてきてくれて」

「いえいえ」

 嫌味の通じない死神はそれだけでやる気が失せる。だからもう何も言わないことにした。