「兎に角ですね、翠さんにも分かるように簡単に言うなれば、その紛れ込んで隠れている誰かを見つけなければ永遠に身体に戻れないってことです」

「なんかちょっとむっとしたけどでもそれはやだよ」

「そればかりか、お前は黒ーい世界に行くことになる」

 嬉しそうに「黒い世界」と言って恐怖を煽って決定打を打ってきたのは、ルーインだ。

 なに黒い世界って。

 アンジュラの所、地獄ってことだろうか。そんなの、


「冗談じゃない! 私何も悪いことしてないし、それにまだ死んでないのに! こっちに来るのなんてまだ先でいい! だからさっさと探してよ!」

「できれば、そうしたいんですがねえ」

「出来ればじゃないよ!」



 しろ!!!!!!!!!!!!




 ついさっき、私と入れ替わってる誰かの顔を思い出したのに、

 思い出したことを私はもう既に忘れていた。
 
 バスの中にいなかったサークル仲間じゃない誰かを知っていたのに、どこかで見た記憶があったのに、

 このときはもう、記憶の片隅の見向きもしないような端っこに追いやられていて、思い出すことはできなかった。