天使みたいな死神に、恋をした


「まぁ、どうぞ」
 
 差し出されたのは、この家によく似合う真っ黒いコーヒーカップ。
その輝きは首切り鎌といい勝負だ。
 
 中に入っている液体はもちろんなんだか不明だが、

 湯気が出ているってことは温かい飲み物かなんかだろう。
 
 鼻に近づけてみると、紅茶に似てる。


「紅茶だと思って飲めばいいですよ」

 紅茶だと思って飲めばいい? なんて適当な!

 ってことは、紅茶じゃないってことは確定ってことだね。

 両手に握りしめてはみるものの、怖くてなかなか飲めない。
 
 そんな私を知ってか知らずか、まるで赤ちゃんに見て教えるように自分で先に飲んでみせる。
 
 ね、おいしいですし心も体も温まりますよ。

 と、らしくない爽やかな言葉を温かい紅茶の香りに乗せて言う。

 眉間に皺を寄せて考える。この死神は一体何?