天使みたいな死神に、恋をした


「まぁ、焦っても仕方ないですから」

 何でそんな呑気なことを言ってるのか、この死神は。

 死神サイドはそれでいいかもしれないけど、私は刻一刻と身体に戻れない時間がせまってるんじゃないの?
 
 いつでも戻れる状態じゃないという今を知っちゃったからにはこれはもう、


 さっさと戻らないと、本当に死んじゃう。


 9日間、呑気に旅行気分で楽しもうなんて気分じゃなくなった。


 そして、一秒ごとに私の記憶は薄れていく。

 今もそう、亮のことを考えていないとすぐに記憶から擦り落ちていく。

 砂山のてっぺんの砂が風に吹かれて落ち去るように、ゆるやかにのんびりとだけど、消え去っていく。

 おかしなことにアンジュラとかルーインとか元サークル仲間とか、

 こっちに来てから出会った人たちのことは鮮明に記憶されていくんだけど、大学生の私の記憶はこうしている今も消え失せて行く。