天使みたいな死神に、恋をした


「ねぇ、やっぱりここにいなきゃならない?」

「はい、そうですね」

「どのくらい?」

「さぁ」

「ホテルとか無い?」

 ここよりは絶対マシだろう。

 例え暗くて陰気くさいホテルでも幽霊は出ないだろうと思う。
 
 ここには幽霊なんかよりも恐ろしいのがいるし、なんか出てくるとしたら思いつきもしない程に恐ろしいものだろうっていうのが予測できる。

「翠さん、ここをどこだとお思いで?」

 と笑い混じりな言い方で切り捨てるように言い捨てると、またもおもむろにローブに手をかけた。

「お前バカだろ。ホテルってそれ人間の世界だけだからな。ふざけてないで大人しくその辺に小さくなってろよ」
 
 邪魔扱いされたらそれは気分を害すってもんだが、そこはアンジュラが真ん中に入って仲裁した。

 
 ここで怒ってはダメだと、やばいやばいと目を反らして身体も一緒に背けた。


 ローブに手をかけたってことは、そうだ、死神の身体なんてお願いされても見たくない。


 目の前で脱がれるのは困るけど、お邪魔しているのは私の方。


 死神の裸なんか見たら私、これからずっと夜寝れなくなりそうだし。



「相変わらず言葉がきついですねぇ」


 くすくすと笑いながらぼそっと言った死神の言葉はあまり聞き取れなかった。