「行きましょう」

「うん」

 ちらりと亮を見て、離れたところに横たわっている私に目をやる。

 相変わらず痛々しいくらいの包帯で。

「身体、痛いのかな?」

「ええ、身体に戻れば痛みは真っ先に感じるでしょうねぇ」

「治ってから帰るってのはあり?」

「無しです。身体に意識が入った時点で回復の道を進む仕組みですので、戻らなければいつまでもあの状態ですし、良くなることはありません」

 
 あぁ、またそれね。

 意識と身体が入れ変わるってやつでしょ。体は意識無しには機能しないってことなんだよね。なんとも不思議な話だよ。

「じゃ、なんだかよくわからないけど、ありがとうね」

「ありがとうですか。はは、ほんとに翠さんは変わってますね。何に対してのお礼なのか分かりかねますね」
 

 ありがとうって言葉が合うのかどうか定かじゃないけどさ。一応、挨拶と思って言ったんだけど、アンジュラにとってはそれが奇妙に思えたらしい。


「私はこちらのミスでご迷惑をおかけして本当に申し訳ないと思っています。と、こんなものでしょうか、人間の世界の挨拶だと」
 

 深々と頭を下げるアンジュラに対し、腕を組んで見下ろしてくるルーイン。