「また会えるよね?」

 念を押して聞いた。

「はい、きっと」

 よかった。

「じゃ、」

「記憶は消しますよ。ここでのことは一切忘れます」

「え?」

 
 記憶は消えちゃうの?
 
 ここにいたこと、忘れちゃうってこと?

 アンジュラやルーインのことも忘れるってこと?


「こっちのことは人間でいる間は知らない世界として認識されていますから。例外は無しですね」

「そうなんだ」
 
 そんな決まり事みたいなものがあるんだ。
 
 ちょっと悲しいような切ないような、なんとも言えない気分。

「少しくらい記憶の片隅に残しておいてくれないかな」

「無理ですね。それはできません」

 そこまできっぱりと言われちゃ何も言い返せない。

「ほら、めんどくせーこと言ってねーでさっさと降りろよ。こっちは残ってる仕事が盛りだくさんなんだからよ。それに、アンジュラに会いたかったらお前、じ……」

「ルーイン、それはあなたが言ってはいけないことでしょう」

「おっと、やばいやばい」

 両手を前に出して手の平を振る。

「ルーインのことは忘れてもいいよ」

「冷たい奴だなおまえは」

 なんかさっき言いかけてたけど、それってなんなんだろう。気にはなるけど、下にいる私を見て、唾を飲んだ。