「亮?」

「やっぱり、翠だ」

「よかった、無事だったんだ! ほんとよかった!」
 
 今度はちゃんと私と視線がぶつかって顔を緩ませて笑うと、

「翠もぶじで……よかった」

 とうつろに言い、そのまままた眠りに落ちて行ってしまった。



『ぶじでよかった』


 
 これが無事に思えたんだろうか。傍らにいる死神を見ても無事だと思ったんだろうか。

 真っ正面、宙に漂っているのに、無事に思えたなんて。

 それとも私と会ったから、私のことしか見えていないからそう感じたんだろうか。
 
 とにかく、いろいろ考えるところはあるけれど、亮は安心したような顔をしていた。私も安心した。ちゃんと病院にいたし、しかもそんなに悪くもなさそうだった。時間さえ経てばちゃんと治るってわかった。


「大丈夫! 翠ちゃんきっと良くなるから! あんたも早く良くなって。じゃないと翠ちゃん一人にすることになるんだよ! そんなの許さないよ!」
 
 おばさんだ。亮の手を握ってる。

「だらしない姿見せたら翠ちゃんにフラれちゃうよ。あんたそれだけは困るって言ってたじゃない」
 

 そんなこと言ってたんだ。別にだらしない姿を見せられたところで嫌いになんてならないのに。

 頑張って背伸びしてたところもあったのかなって思うとなんだかほっこりした気持ちになり、自然と顔には笑みがこぼれていた。