天使みたいな死神に、恋をした


「その言い方はなんかイヤな感じだね。私、ものじゃないよ」

「何がイヤなのか想像に苦しみますが。私は本当のことを言ったまでです」

「え、死神も苦しいの?」

「……そこですか?」

「いやごめん、話を戻すとね、私の身体はただの入れ物みたいってそれはどういうことなの? まるで器かなにかと思える言い方だよ」

「そうですよ。地球上にいる生物はみんなそんなもんです」

「なんでそんな入れ物の中に私が?」

「人間をやる上での、もしくは動物、地球上で生きるすべてのもののシステムですかねぇ。よく出来ているでしょう?」

「神様が作ったの?」

「19世紀の終わりに、神は死んだって言葉が出たのをご存知無い?」

「無い。それにそんなこと聞いた覚えも勉強した覚えもない」

「……もったいない。翠さんの住むところにはそう言ったことが書かれている書物がたくさんありますよ。このことばは最近のもので、ニーチェのものですが」

「そうなんだ。じゃ、帰ったら読んでみるって、ニーチェって最近じゃないよね」

「私たちには最近です」


 そんなこと言われるともっとちゃんと勉強しておけばよかったって思ってしまう。
 

 話戻して、よく空を飛ぶと言うが、でも不思議なことにその感覚は私には無い。
 
 良くできているものでね、実際こう意識だけになると、歩いている感覚?

 それがそのまま飛んでいるというイメージになるみたい。
 

 いつも通り、ふつうにそこに床があるように歩いている。