「そう思うのも分かりますが、誠に申し訳ないんですけれども私にも一応名前がありまして。聞かれたら答えなければならなくてでして」
「ふーん」
「……ああ……申し上げても宜しいでしょうか」
「言いたければどうぞ(ご勝手に)」聞きたくないけど、言いたいなら、はい、どうぞ。とりあえずは聞く。
「……ジュラと申します」
頭を下げた。
「ジュラ? え? まさかの恐竜? ジュラシックなんちゃら? とか?」
私は思わず体を引いた。
「恐竜ではなくて、アンジュラです」
小さい声で自信なさげに、そして控えめに言った。ついでになぜかクスッと笑った。
「あのさ、ほんとそれ小さい『ュ』で良かったと思ってね。『ェ』だったらまじで殴ってる」
私はぶん殴りそうになる右手の拳を左手で一生懸命に抑えた。
ふざけてるでしょう。死神がアンジュラなんてさ、最大限にふざけているとしか思えない。
アンジュラは、はぁ、そうですね。ですから私もいつもは名前は名乗らないのですけど、翠さんがあまりにもしつこく自殺はしていないと言うものですから……
と、濁した。