「コバちゃん。ねえ、コバちゃんは私のこと分かるでしょ」
 
 もしかしたらこっちは覚えているかもしれない。山田っちがダメでもこっちは。と、淡い期待は、

「君だれ? ごめんね何も思い出せない」

 あっさりと崩された。

「本当に私のこと忘れちゃったの?」

「逆になんで俺たちのこと知ってるの?」


 不思議だとばかりに二人は私をじっと見る。これ、冗談じゃないんだ。二人の顔真面目だし、冗談を言っている風でもない。


「はい、集合! さっさと来る!」


 と、手を打つ音に大きな呼びかけが聞こえ、山田っちもコバちゃんも二人で並んで歩いて行く。
 


 その先に、小川淳子(おがわじゅんこ)の姿も発見した。
 


 オガジュン! と声をかけても、一瞬足を止めてはくれたけど、小首を傾げて知らぬフリをしてる。フリだと思いたい。

 どうなってんだか理解できないけど、私の知っているみんなは、私のことなど忘れてる。