天使みたいな死神に、恋をした



『またお会いしましょう』




 また会いましょうって言った?

 言った?  言ったよね? 言った。



『はい、言いました』



 今までのことがどしどしと頭に乱雑に重たく降り注いできた。頭に降り注ぐその度にドクドクト頭が痛くなる。

 両手で頭を抱えた。


 アンジュラのこともルーインのことも、あの事故のことも。みんなが私を忘れていたことも。三人で遊んだことも。何回やっても戻れなかったことも。


 綠さんが言い残したことだって、彼女がやったことだって全部全部全部、全て思い出したよ。


 あの紅茶に何か仕組んだってことまでも。しかも何回も。


 わざと記憶を消したことだって。


 本当は性格悪いんだ。



『翠さんがそちらで悪いことをたくさんしたら、私の家のあの川の中で私に会うことができます。そうなるのを期待して待っていますので心置きなく悪さをしてきて下さい』


 爆笑する二人の笑い声が耳に届き、なんだかむかつくし、切ないし、悲しいんだけど、笑っちゃう自分もいる。


『ちゃんとしっかり今の人生を最後までやり抜いたら、仕方ねえから迎えに行ってやるよ』

 ルーイン、それ約束だよ! アンジュラも!

『……え? はい? なぜ私まで。その時は必要ないでしょう』

 私がまたこっちの世界に本当に来るときがきたら、きっと私ね、

 きっと私ね、アンジュラ…………


『分かりました。面倒くさいですけれど、仕方ありませんから迎えに行きますよ。それまで、楽しみにしておきます』

 また私の言葉を最後まで聞かない。

 何を言おうとしたのかは、きっと心を読んだんだろうな。

 でも、よく分かった。

 良かった。安心した。

 もう一回この二人に会えるんだ。って思ったらふわりと肩の力が抜けて、頭も痛くなくなって、体が軽くなった。