天使みたいな死神に、恋をした


 病室の中はともかく廊下にまで響く声で叫ぶ彼氏の姿。




 心電図モニターはすぐにまっすぐなラインになりそうなほど弱弱しかった。





 ルーイン、もう、会えないの?





『会う必要もない。心配すんな。ここのことは忘れるから』


 忘れたくないよ。ルーインのことも、アンジュラのことも!


『え。名前まで思い出した? そうか、それなら』

 背中をさすられながら、肩で呼吸をする。

『仕方ねえから一つ教えといてやる。
おまえは全てにおいての真実の姿を見ていない。
だから死神のことがよく見えるとか変な感情になったりしたんだよ。
いいか、おまえが見た死神は……
骸骨に皮つけたようなもんだ』

『……すみません。ルーイン、あの、言葉……』

『おまえのそのちんけな脳は目に映った映像を形と色と動きに分解するんだよ。わかるか? 
で、その分解された情報をもう一度組み立て直す。で、最後に認識する。それが視覚なわけだが、未だかつておまえは死神をその目で見たことが無い。更にこの死神はパーツだけはいい』

『ですから、言葉を少し柔らかくお願いしたいんですけれど』

 死神のお願いは軽く無視し、


『おまえの脳の中にある情報外の情報が入ってきた時、脳はそれをぼやかして映す。
だから、『パーツ』だけはいいこいつを良くみせてしまったんだろうな。だから、そのおまえの邪な情報は、間違っていると決定される』

『…………あ、もう、なんかもうそれでいいです』


 言い返したいけれど、そんな気力はない。

 ルーインの話すことに意識を傾けているのだけでも苦しくなってきてる。相変わらずぐるんぐるんに回っている。