とはいえ、知らないうちにあまりにもびっくりしていて声にならない声が口から出ていた。

 ただ口をぱくぱくさせている私を見て、たぶんまたくすりと笑ったんだろう。

 少し肩の辺りが揺れたから。
 
 ってことは、さっき言ったことや、考えてたこととか、

 分かっちゃってるってことだよねぇ。

 いやいや、偶然かもしれないし。

 そうだ、偶然だ。あの歩き方を見たら誰でもそう思うだろう。私たちとは違う次元にいるとしか思えない。



 でも万が一聞こえてたとしたら……ショックだわ。



「ええと、言いにくいんですがさきほどから言葉として発してますからね。お気を付けて」

「え? うそ? 言っちゃってるの?」

「残念ながら〇聞こえです」


 死神は恭しく頭を下げると、うっすらと身体のラインがぼやけてきて、辺りの色と同化し、

 見ているその場で煙のように消えて行った。