天使みたいな死神に、恋をした


『でもまさかあいつが薬が完全に効かないくらいお前のことが好きになってたなんてな。お前の薬もまだまだってことだな』

 意地悪そうに笑っている。


『本当ならば欠片も思い出さないはずだったんですよ絶対に。少しばかりの思いもなにもかも消したはずでした。しかし……」


『一度記憶を消しちまえば簡単な話だったんだよ。そうなりゃ楽に戻せたけど、俺らけっこう焦ってたからな。まだまだ未熟ってことか』

『そうかもしれませんね。それに翠さんの体が最期を迎える時まで意識が戻らなければ、あの彼氏ならきっとそうすると思いました。単純な翠さんのことですからすんなり戻るって。その時に私たちのことを覚えていると戻れません。今まで何度やってもダメだったのはそこでした』


『俺思ったんだけどさ、おまえ本当は帰したくなかったんじゃねーの? だから最後にほんの少し望みをかけたとか、そんなことない?』

『ありません』

『きっぱりか。それでもお前とあいつだったら……』

『ルーイン。いいんですそれは。それに、ちゃんと残しましたから。忘れ物をね』くくと同じような意地悪な笑い方をした。

『残したって何を?』

『私だって悲しみますよ少しは。あんなに面白い人はきっと他にいないでしょうし。しかしそれ以上にあの男性は翠さんのことを想っています。それにね……

そんなに私は性格はいい方じゃないんです』

『知ってる。だからこそ気が合う』

『…………これから少しばかり寂しくなりますねぇ』

『お前でもそんなこと思うんだ』

『相変わらず失礼な天使ですね』