倒れないようになんとか踏ん張って立っている。

 ぐるぐる世界が回っていて、上下左右の感覚がない。

 気持ちの悪さも限界に達し、我慢できずに目を閉じた。


 ぐるんぐるんに巻かれているところで私の体が何かにぶつかった。

 走馬燈。

 いままでのことが古い写真のように目の前を流れていく。

 サークル仲間とバスに乗っていた。

 彼氏がほかの子とラインをしていて、それに怒ったこと。

 バスの中で彼氏とケンカした。

 バスの前、一人の女の子が飛び降りてきたこと。

 バスが急ブレーキをかけたこと。

 前に座っていた私は急ブレーキの拍子にフロントガラスに叩きつけられた。

 そして、

 気が付いたら一面真っ白の世界の中にいた。

 そこで会ったサークル仲間たちは私のことを忘れていて、

 緑さんて人にも会ったっけ。彼女は確か自殺をした人。

 バスに飛び込んだ人だ。

 彼女の彼氏にも会った。


 それで、確か……

 まだ時間もあるからって私はあの世を見物に行こうとしたんだ。

 そこで、

 天使に会った。

 そこで映像がスローになった。

 初めて見た天使は透けるような金色の髪。首を傾げて髪を揺らすたびに髪の先から金色の光が弾けていた。