ドクンと心臓が音を立てた。

 胸を抑える。目を見開いた。

 呼吸が止まった。苦しい。痛い。

 無意識にベッドに横たわる私に目を移す。
 泣きながらキスする亮の姿。


「お前が既に死んだと思い込んで泣きながらキスしてるな」


 ドクンと再度心臓が脈を打ち、痛さに耐えられず、更に小さくうずくまった。


 私の背中を覆うようにして温めてくれるルーインは、ゆっくりと背中をさすってくれる。

 



「相変わらず気持ち悪い彼氏だな」






 …………こんな時にも……

 この堕天使は。





「翠! お願い。戻ってきてよぉぉぉぉぉ……ぅっっうっ……」

 もはや男気皆無な頼りない彼氏。

 ここまで女々しいとは思ってもみなかった。

 己の涙と鼻水で濡らした私の顔を手で拭いては泣き、拭いては泣きを繰り返している。


 深呼吸をすると、もう一度意識の無い私の唇に優しくキスをした。


 殴られたように鈍い痛みをお腹に感じ、後ろの方へ吹っ飛ばされた。


 左右に見える景色は前方へ流れ、後ろにいたはずのルーインも景色に混ざって流されていく。