「誰でも?」
「そう」
「どんな状態でも?」
「今のお前のように」
「そうなんだ」
「そこまでの心境になる前は恐怖に支配される。これからどうなるんだろう、今こうして見えているもの、聞いているもの、触れているものが全て無くなってしまうんじゃないかって思って、不安に苛まれる。でだ、体が限界までくるとその気持ちは無くなるんだよ」
「なんで?」
「脳が最後に指令を送るのは、恐怖を和らげること。だから、これが最後になるって分かって悟った人間は」
「人間は?」
「笑うんだよ」
「…………」
「笑って、ありがとうって言う」
人間ってのは最後にその人の本質が出る。
そう言ったルーインは真面目な顔をしていた。
たぶん、私がそろそろその境地だってことを言いたいんだろう。

