彼氏、号泣。
私、冷たくなる。
「翠! 早く戻って来いって! もう悲しませることしないから!」
私の両手や両腕を力任せにさすってる。時々涙を腕で拭いながら、ついでに鼻もかみながら、ぼろぼろの顔を見せている。
それをぼけっと見ている私。
さすられているはずの自分の腕にはなんの感覚も無い。
「なんでもするから!」
もう、やけになってるんだろうなぁ。
神様に一生のお願いをするのに似てる。
帰らないと。私、戻らないとならないなぁ。
まだ少しぼーっとしている頭でそんなことを思った。
でも、何故か冷静になってる自分もいて、
「ルーイン、こんな状態なのになんで私こんなに冷静なの?」
「…………まぁ、もうそろそろ逝くだろうからいいか、教えてやるよ。それはな、人間として生きた最後、そうだな、死ぬ瞬間っていうものは誰でも穏やかな気持ちになるんだよ。怖さは無くなる。死ぬ少し前から意識は覚醒して、こっちとそっちと半々を行き来するようになる。死ぬ瞬間の記憶はない」