「やーだこれ、本当に私帰れないじゃーん。ふへっへーい」
へらへらと笑う私に危機感は完全に無い。
でも、どうにもこうにもぼーっとしちゃって何がどうなっているのかすら、分からない状態。
なーんにも深く考えられない状態だ。
焦った顔の天使は独り言を言ってるけど徐々にそれが大きくなってきて、もはや私にまで聞こえる声になっている。
「あいつまじでやりすぎ。まさかわざとか? いやそんなことはないだろう。時間に余裕がないのを知ってるからそれはないか。それにこの問題は話し合ったしなぁ。あいつだって少しすればまともになるだろうと思ってたんだけどな。まさか初歩的なあれか、まさかのミス、またか。いや待て。あいつこの期に及んでまだ遊んでるとか……」
「あいつってだーれー」
間延びした声に少しだけしっかりしている自分が頭の中で『キモッ!』と突っ込んだ。
「黙ってろ」
「うー、何その冷たーい言い方」
「お前は事の重大さがぜんっぜん分かって無いな! 下見てみろ。そろそろ上半身まで冷たくなるぞ。そうなるとどうなるか分かるか?」
首を横に振る私に、親指を下に向ける天使。
上半身が冷たくなる? ええとそれって、そういうことか。
「……そろそろ本気でやばいぞ。これは本当に危ない」
「ねー、天使はー、そんな乱暴な言葉遣いしないと思うんですけどー」
「天使天使って鬱陶しいな」
「みなさん幻滅しちゃうー。天使がこんなに口が悪かったらさーね、こっち来たとき幻滅ー」
「幻滅でもいいけど、おまえ本気でこっちに残る気か」
「こっちに残る?」
舌打ちをしながら頭をぺしんとやられ、あまりの痛さに頭を両手で抑えた。