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「いいか? よく聞けよ。今回はもうマジで時間が無い。お前の体はいよいよ既に半分が冷たくなってる」

 ぼっけーっとする頭の片隅で誰かが話す声を聞いた。

 それが誰だか分からない。

 分かってるんだけど、名前が思い出せない。

「おい!」

 両頬をおもいきり叩かれようやくなんとか正気に戻りつつある私は、現在の立ち位置、病院のベッドで横たわる『私』の真上に立っていることに気付く。


「……ほっほー。病院ですか」

「へらへらしてんな。なんだよほっほーって」

「……てんしー」

「…………キモいな、あいつ何やったんだよ」

「あいつってー、なに?」

「なんでもない」

「なんかーよくわからないけど私ー、ふわっふわしてるー。気持ち、いいー」

「ふざけんなおまえは。このまんま分からないままとっとと戻れ。時間がない。ほら、早く戻らないとお前の彼氏、さっきから大泣きしてるし」


「彼氏? 誰だっけーそれー」


 頭ぼーっとしてて何がなんだかよく分からないけど、この下に見える私の体に戻らないといけないんだよね。


 てか、戻ればいいんだよね? 


 で、隣ですごい顔して泣いてるのが私の彼氏か。

 私ここにいるのに、なんでそんなに泣いてるんだろう。

 周りには誰もいないし、この人しかいない。