「ちょっと待ってよ。何、それ」

 ティーカップをソーサーの上に無造作に置き、アンジュラの方へ無意識に寄せた。

「最終手段でした」

「何の最終手段」

 まさか、殺されるとかじゃ。

「はは。半分死んでるようなものなんですからその必要はありません」

「じゃぁ……なんなの」

「さきほど川へ連れて行きましたが、あれはただ連れて行ってなんとなく見せたってわけじゃないんです。言いにくいんですが、そしてあまり言いたくもないんですが、あなたを、」

「……私を幻滅させようと思ったとか言わないよね?」


「あ。っと、ええと、まぁ、その……仕事をする時の私は気持ちの悪いものに変わりますし」

「確かに、目は気持ち悪かった。間違いない。でもさして変わりはないから安心して」頷く。

「はあ…………言葉を包む。という便利な言葉がありませんでしたっけ? まぁ、いいです。私はここに送られてくる人をばっさりと切り落とし、川に沈め、それでもあの人たちは死にきれませんから、最後の最後までもがき苦しむ様を見届けなければなりません」

「だってそれって悪いことをしたからこっちに来たわけでしょ?」

「そうです。人を殺めたり、騙したり、傷つけたりしてきた人が最終的に行き着くところがここです。つまり私の所です。私はここでその人たちを永遠に苦しめ続けます。それが仕事です」



 ごくりと唾を飲み込んで、まじまじとアンジュラの顔を見た。