天使みたいな死神に、恋をした


 後悔先に立てぃ!

 まだこんなとこで死ぬわけにはいかない!

「アンっ……」


 最後まで言う前に私の体は川の中に沈みそうになる。

 川の中から無数の黒い手が伸びてきて、

 私とうとうこれで完全に最後かも。


 おかしなもので、こっち側にいるせいなのかそんなに未練的なものは無かった。

 そして、怖いんだけど、一度怖い思いをしてこっちに来ているので、そんなんでもなかった。


 完全に私を私からさよならするところだった一歩手前、



「大丈夫ですよ。ちゃんと見てましたから」



 逆さづりにされていた私の体はいつの間にか持ち上げられ、死神の腕の中で、いや違う、


 米俵を担ぐように肩に担がれていた。

 待て。私は米俵じゃない。荷物でもない。


「アンジュラ、遅いよ」もんくのひとつも言わないと怖さはぬぐえない。

「ははは。私も確かに少しばかり気を取られていましたから」

 いつの間にか声のトーンも変わり、表情は見えないけどたぶんいつも見ているアンジュラに戻ってるはず。の、声色だ。