天使みたいな死神に、恋をした


 ここに来る前もそうだった。
 
 私はいつもどこかあと1歩が足りない。
 
 この期におよんでもまだそうなんて、悲しすぎる。
 
 川が音を立てて割れ始めた。
 
 ここに落とされたら私永遠に無の境地を彷徨うことになると思うと、体がドクンと唸りを上げ、それを拒否し始めた。


 アンジュラ!


 の方になんとか視線を向けたけど、やはり楽しそうにかっさばき続けている。

 時折変な奇声を発する変な死神が約一名、無我夢中で仕事に取り組んでいた。
 
 体が前に進み出し、もうすぐそこまで川が迫る。
 
 黒い川の水が手につきそうで、気持ち悪い。
 
 無理、なんともできない! もう無理だ!


 もう! ダメなのか。


「…………ジュラ!」


 出ない声を最大限に発揮して叫んだんだけど、残念なことにその声は死神の雄叫びと重なり、無情にもかき消された。


 一歩、また一歩と抵抗虚しく進んでいく。