私の目の前にいるこの男
たぶん声からして男(だろう)は、そう、死神だ。
っとに胡散臭いことこの上ないんだけど、本人が言うからにはそうなんだろう。
そして、さきほどからかなりの低姿勢で謙虚(今のところは)
私の名前は、金糸雀 翠(かなりあ みどり)19歳の大学生。
鳥みたいな名前だけど、鳥じゃない。
えーと、この死神の言葉を借りて厳密に言うなれば、『だった』だろうか。
ここにいるってことは、死んだってことらしいから。ひとまずはね。
黒髪のぱっつん前髪に胸下までの長い髪はいつも後ろで一つにまとめている。特別かわいいわけじゃないけど、そこそこだと思いたい。そんなかんじ。
で、この死神の名前は……
ええと、
「名前なんてそのまんま、死神でいいんじゃない?」
どうせ死神なんでしょ? 名前なんてなんでもよくない? と、投げやりに言ってやった。
死神の名前なんて聞きたくもないし、覚えたくも無い。
まず、興味がない。