で、アンジュラがその空気を感じ取り、急いで家に戻って、私と黒いドロドロのいきさつを見て、始末してくれた。

 それもしてはいけないことの一つだったそうで、このあときっとこのことを聞きつけやかましい顔をしたルーインがやってきて、これでもかって程嫌みを言うんだろうなってことが、手に取るように分かる。

 その黒いドロドロは私を捕まえて喰えば、ここから脱出できると思っている。ということだ。

「本当にごめんなさい」

「はい、分かってくれればいいですよ」
 
「そんなこととは思わず、つい。それになんだか記憶も持たなくなってる。で、ええと、仕事は? もう終わったの?」

 帰ってきたってことは、終わったってことなのか。それとも……

 私がバカなことしたから帰ってきたのか。

「いえ、まだすべては片付いていませんけど、翠さんを送り届けてからの方がやりやすそうなのでそうします。それに記憶が無くなっているのはこっち側に強く意識が傾きだした証拠ですよ」

「……」
 
 今またもしれーっと怖くて泣きそうになるようなことを言ったの、分かってるのかなぁ? いや、気付いてないだろうなぁ、この感じだと。でも、今回は私のミスなので、強く言えない。

 助けてくれたのもアンジュラだし。仕事の邪魔して本当にごめんねって思う。そっちの方が自分のことよりも先に頭の中に浮かんだことだった。