「でもなんでそんな奴がここにこれるの? ここってそう簡単には入って来られないんでしょ」
「翠さんの匂いを嗅ぎつけたんでしょうねきっと。生きている動物はにおいがしますから」
「ただ、それって本当にきもすぎるんですけど。においするとか言わないでよ」
「仕方ありません事実ですから。しかし問題はそこじゃありません。ここにいるべき人でないあなたがいるということが分かったからこそ寄ってきた。ということです」
「そんなことが出来るわけ? てか、分かっちゃうもんなの?」
「翠さんの常識はさっさと捨ててくださいね。私と一緒でも違うにおいはこの沼に沈む亡者は敏感に感じ取れるんですよ。なぜならここに居る者は皆、死にたくて死んだ者じゃありませんので。分かります? この意味。ですから、危ない目に合う前にさっさと戻った方がいいんです」

 この家にはアンジュラ以外誰も入ることができないんだけど、私がここにいるってだけでこの家の存在もが危なくなるかもしれないと分かってしまい、申し訳なくなる。

 次の問題は、私が勝手にドアを開けて外に出たことらしい。
 うっすら嗅いだ臭いにつられここまで来たけれど、私が出なければやつらもアンジュラが仕事をしてきたその臭いだったんだと分かり、やられる前に沼の底に逃げられたものを、私が出てしまったから、ここにはアンジュラ以外のモノがいるってことがばれてしまった。

 今まではアンジュラと一緒に家から外に出ていたから、それによって守られていたんだけど、そうじゃない時に出たから問題が起きた。

 一人になったら人間のにおいが強く出てしまう。それにつられて亡者が来てしまった。
 
 ノックされても無視しておけばよかったものの、外に出てしまったから、ここ(アンジュラの元)に連れて来られたここにいるべき人に気付かれたってわけだ。