「翠さんにはもう会えないんですね?」
「そう言ったろ? あいつはおまえと会うつもりでいるみたいだけど、無理だ。それにおまえのせいで身体に戻れなくなっている。しかもそれはおまえも、ムカつくけど俺も気にしていることがもしかしたら起こるかもしれない。分かるな?
更におまえはあいつの仲間たちも道連れにしてこっちに連れてきている。
なんであいつのサークルに紛れ込んだのか、本当の本当のところをを言ったらあいつはどうなると思う? あいつを殺してあいつの体を乗っ取ろうと企んでたことを知ったらどうなる? そんなことはしっかり考えずにおまえのことを思ってここまでやってくれたのはあいつだぞ」
「……そんなことまでお見通しだったんですね。最後まで私はみんなに迷惑をかけているんですね」
「だろ。でだ、今おまえがしたようなことを最悪こっちに残ることになった場合、自分も出来るとあいつは思ってる。でもそれが出来ないってことを知ったらどうだ」
「本当に申し訳ないです」
「これから身体に戻る奴はこっちの世界であった出来事に対して首を突っ込んだり、深入りしちゃいけないんだよ。俺たちの世界のこと、それが尾を引いて戻れなくなったケースが何件かある。あいつもそうならないとも限らない。だから、おまえはこのままアンジュラに引き渡す」
「はい。あの、私が巻き込んでしまった人たちはどうなったんでしょうか」
「ここでは人だった頃の記憶は夢みたいなもんだから、既に忘れてるし、先に進まなきゃなんないんだから、そっちのことで頭がいっぱいになってる。記憶にすら残ってない」
「そうですか」
「ホッとするな。お前は最悪の事をしたんだからな。ホッとする資格は無い。残された人のことを考えたらおまえを今すぐアンジュラに引き渡し、死しても苦しむ場所に送りたいくらいだ」
「……そうですよね」
「お前の記憶は人のままで薄れることはない。これから地獄の苦しみの中で後悔し続けて自分を否定し、ボロボロになっていく。更に、俺らがいないことを確認したのち、あいつを騙して体を乗っ取ろうと考え実行しようとしていた。信二との話の中でその感情が薄れたとはいえ途中まであいつを騙したのは変えられない事実だ。それも加えられる」
「…………」
「それがおまえが自分自身に自分自身で課した罪だ。誰に何と言おうと行先は変えられない」