天使みたいな死神に、恋をした


____________________

 

「時間は10分しか与えられない。いいな」

「時間なんてないんじゃなかったの?」

「人間界では時間が一つの生活基準となっていますからね。ここではそれで計ります」

「そうなんだ、わかった。緑さん、大丈夫?」

「大丈夫です。10分もあったらお別れはちゃんとできますから」
 
 綠さんは信二君の部屋の前でルーインに念を押されているところだ。
 
 その横で私はアンジュラと二人、事の成り行きを見守ることになった。


「ねぇ、たったの10分で何が出来るってわけ? もっと時間作ることはできなかったの?」
 

 私はアンジュラに耳打ちした。

 ルーインに聞かれると、それはそれでやっかいだから。


「10分でも長いんですよ。ルーインはよく頑張ったと思いますけど」
 

 何を頑張ったんだか知らないけど、たった10分じゃ少し話して終わりじゃない。二人になったら話したいこととかよりもっといろいろある。


「それにそれだけ時間があれば、けっこう話はできると思います」

「話だけじゃ終われないってもんでしょうに。久しぶりに会ったらさ。いろいろあると思ったりしない?」

「そういったよこしまなことは出来ませんよ。そういう風になっているんです」
 

 私の考えを読んだのか、そのくらいお見通しなのかさらりといなされた。