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「時間は10分しか与えられない。いいな」
「時間なんてないんじゃなかったの?」
「人間界では時間が一つの生活基準となっていますからね。ここではそれで計ります」
「そうなんだ、わかった。緑さん、大丈夫?」
「大丈夫です。10分もあったらお別れはちゃんとできますから」
綠さんは信二君の部屋の前でルーインに念を押されているところだ。
その横で私はアンジュラと二人、事の成り行きを見守ることになった。
「ねぇ、たったの10分で何が出来るってわけ? もっと時間作ることはできなかったの?」
私はアンジュラに耳打ちした。
ルーインに聞かれると、それはそれでやっかいだから。
「10分でも長いんですよ。ルーインはよく頑張ったと思いますけど」
何を頑張ったんだか知らないけど、たった10分じゃ少し話して終わりじゃない。二人になったら話したいこととかよりもっといろいろある。
「それにそれだけ時間があれば、けっこう話はできると思います」
「話だけじゃ終われないってもんでしょうに。久しぶりに会ったらさ。いろいろあると思ったりしない?」
「そういったよこしまなことは出来ませんよ。そういう風になっているんです」
私の考えを読んだのか、そのくらいお見通しなのかさらりといなされた。

