天使みたいな死神に、恋をした


「よーし、それならおまえ、後悔するなよ」

「ちょっとやめてよ、後悔するようなことなんてしないでください。それにたぶん後悔なんてしませんきっと」

「よし言ったな」

「言いましたけど、後悔はやっぱしたくないよー」

「ふん、もう遅いわな。あとあと後悔しても知らねえからか」

「なんてことを! 仮にも、仮にもあんたは天使なんだよ! そんな怖いこと言わないでよ、アンジュラ!」

「はいはい、後悔するようなことにならないといいですねえ」

「知らぬ存ぜぬはやめて」

「だからおまえのその先入観をなんとかしろ。天使と死神の先入観、早めに捨てろよ」

「まぁまぁ、落ち着いてください二人とも。そんなことでいちいちもめても仕方ないでしょう。そうこうしているうちにほら、翠さんの体はこっち側に来る準備を始めてしまいますよ。さっさとやって戻りましょう。そうしたら丸く収まるんでしょう?」

 よし。とばかりに気持ちを入れ替えて綠さんを振り返るけど、彼女は何が起こったのか理解に苦しんでいた。
 
 ただ、最後のお別れがちゃんと出来るよってことを伝えると、ありがとうと何回も言った。


 でもこの時彼女が誰にも分からないように鼻で笑っていたことなんて、その場の誰もが気付かなかった。